最後の仕事

父親は、本当に素晴らしい経歴で、娘さんが父親に頭が上がらない理由が分かった。

父親は、クレバーな方で少しでも理解できないことがあれば、理解できるまで資料を集め、話を聞き、納得するまで了解しない人だ。だが、その反面、正当な話を正当にすれば、理解される人であることが分かった。

私は、時間をかけて、今までの先方にある資料を、どのように理解しているのか聞き、その日は夜になった為に一週間後に再訪することを告げて帰った。私は、一週間後に訪問しようと決めていたが、三日後に父親から電話があり、「まだ来ないのですか」と訪問日の確認があった。約一週間後に訪問する旨を伝えたつもりであったが、確認の電話であった。

「宜しければ、希望日にお伺い致しますが……」

「ああ、そうですか。いつでもこちらは良いですが」

私の訪問を待っているような素振りであり、

「明日にでもお伺い致しましょうか」

と言うと、

「いいですよ」

と心待ちにするような回答であった。

そんな誘いを受け、再訪問した。私は、父親に、現在の「羽田空港の航空範囲の規定」を土産に、他に崎陽軒の焼売を持参し訪問した。以前と違い、本人が門まで出迎えてくれた。父親も以前とは別人のような温和な雰囲気で私を迎えてくれた。

父親も、このようなことが長く続き結論が出ないことは異常であることを理解されたのか、話は、滑らかに進み、娘さんも、にこやかな顔で私を迎えてくれた。