カラスは一瞬、振り返って、農夫の頭上を旋回し始めました。気のせいか、カラスがどんどん大きくなっていくようです。

いや、本当に大きくなって、グライダーのようになり、静かに着地して言いました。

「我々カラスは、天狗の使者で大きくもなれる。普段の姿は仮の姿だ。理不尽な人間どもは懲らしめもするぞ。お前は毎日毎日、朝から晩までよく働いている。お前の夢とやらをかなえよう。自分の畑を空からよく見るがよい。ただし、落ちるなよ。背中に乗りさい。行くぞ」

カラスは、いきなり羽ばたき空高く舞い上がり、先ほど見せたように急降下して畑に墜落するかのように滑空します。

これは夢なのか、現実なのか、農夫は頭の中が混乱していました。ただ分かったことは、天狗の使者というこのカラスが、人間に正しい生き方を教えてくれているということ。

そんな共感だけを、震えながら感じたのです。

「これで良かったのだ、おれの人生は」

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『ぎんちゃんの生きとし生けるものとの対話』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。