食事がでた。鰻重だ。新年度のお祝いだそうだ。ビールも並んでいる。あれ、昼間から酒を飲んでも大丈夫なのかな? 新年度のお祝いということで、年度最初の例会だけはアルコールが出るらしいが、僕はクルマで来たから当然飲めない。

周りを眺めていると、何人かのお爺さん会員たちが飲み始めている。あとで分かったことだが、その人たちは徒歩で帰れる町中の古くからの商店主いわゆる旦那衆と、送迎のクルマがある大企業の社長さんたちだった。

そうか、ロータリークラブというのは、こういったお金持ちで時間に余裕のある人たちが長年築いてきた会であって、僕なんかの新参の若造が馴染んでいくのにはそれなりの時間がかかるのだなと思った。

僕はこの会に付いていけるのかいささか不安になった。ウナギの味は良く分からなかった。

その後、幹事の進行で理事会報告やら出席報告やらニコニコボックス(※2)報告やらのわけの分からないことが目の回るスピードで続いて、やっとNK会長さんの二○分ほどの講話(卓話という)になった。

さすがに会長は、落ち着いた話振りで、今年度のクラブ方針の説明をした。確か、会員をもっと集めたいとの内容だった。

いまになって思い返すと、ロータリーはずっと会員増強をテーマにしてきたんだなと思った。

最後にもう一度会長が鐘を撞(つ)いて会はお開きになった。アッという間の一時間だった。

隣に座っていた会員に尋ねた。例会の中で取り上げられていたいろいろな言葉やその意味についてだ。彼は下を向いてこう言った。「そのうち分かるよ」そうか、この人も詳しくは知らないのだ。

例会が終わると、いろいろな会員が寄ってきて名刺の交換をした。顔と名前、名刺も一致しないが、数十枚の名刺が手許に残った。あとで見返すと、それなりの会社の社長さんたちばかりだ。

来週までに整理して、早くクラブに馴染まなくては、と思った。