私は自身でも驚くほどに無造作に即答しているではありませんか。それも仏の名まで引き合いに出して。ほかにもいろいろ答えたと思うのですが、今も覚えているのはこの言葉だけです。

御仏の祭壇がさながら目の前にあるように、ひざまずきお祈りをしています。そしてお祈りもそろそろ終えようかなと思っているうちに不謹慎なことですが何となく不安な気持ちになって再び周りを見回してしまいました。

あれほど明るかったのに今は一人ぽつんと暗がりの中にいるというありさまです。あの方も兄もいつの間にかどこにもいません。

さっきまで出入りしていた人たちとか肉親の者から放っておかれたというのではなくて、これまで親しくさせてもらっていた人たち、さらには家族の皆から完全に見捨てられ、あの世に連れていかれるのではないだろうかというような気分です。

それとも連れ去られて、もうあの世にいるというのが本当のところだったのでしょうか?

今ではどちらともわかりません。そうこうするうちにもっと気分が塞いできて、私は元々この世では知人も友人もほとんど積極的に得ようともしなかったのでこんなことになってしまったのではないだろうか、というようなことまで考えてしまうのです。

数少ない知人や友人が私を介して互いに知己の間柄になり、交友関係を密にしてお友達の輪を広げられたというような覚えもありません。

ましてや私が関わることがないままに偶然のおかげでそのようなことが起こったと思えたこともありません。元々出不精で、お友だちの輪を広げる気持ちもありませんでしたから。

そのような私が好ましいと思った方はあのひとしかいませんし、結局あの方だけがただ一人のひととして私の人生は終わってしまうのではないでしょうか」

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『ミレニアムの黄昏』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。