インバウンドや国際化に向けて

旺盛なインバウンド需要、そして立て続けに行われるワールドクラスのスポーツイベントや博覧会などに対応するために、全国の鉄道会社では平成に入ってからハード面とソフト面の両面で外国人観光客に対応するべく、様々な外国語でのサービス改善が急ピッチで行われてきました。

ハード面だと例えば、駅の看板や駅名標、案内図、時刻表、切符を購入するときの運賃表などの多言語化。昭和の時代までは日本語だけのものが多かったのですが、英語との2か国語表記が最低限の装備になってきています。

近年はこれに加えて韓国語と中国語を併記した4か国語を充実させている鉄道が多いです。

中には、名鉄や名古屋市営地下鉄、リニモのように、中京地区に在日ブラジル人が多く住んでいる背景からポルトガル語を追加していたり、南海は、フランス語圏の観光客にとって知名度の高い高野山へのアクセス対応でフランス語を導入したりするなど、地域の実態によって多言語化を柔軟に行うケースも見られるようになりました。

他には、神戸市営地下鉄の一部の駅などにQRコードを既存の案内板に貼り付けて多言語化対応しているところも見られます。一方で、ソフト面での整備も並行して充実してきています。

一番の例を挙げるとするならば、2か国語や多言語での自動放送を挙げる方が多いと思われます。2か国語の自動放送は、全国各地の地下鉄やJRの近距離路線、大手私鉄で当たり前になってきました。

3か国語以上だと1998年の長野冬季オリンピック開催期間中に、当時の新幹線あさまの車内でフランス語の放送が期間限定で行われてはいましたが、現在は京成のスカイライナー、東武のスペーシアやリバティ、りょうもう、近鉄のアーバンライナーやひのとり、しまかぜなどの名阪・伊勢系統の特急、阪急の京とれいん(京とれいん雅洛も含む)、京阪の特急と快速特急洛楽、南海のラピート、九州新幹線の博多〜鹿児島中央間、西鉄の特急などで幅広く日本語、英語、中国語、韓国語の4か国語の自動放送が導入されています。

これと歩調を合わせるかのように、車内ディスプレイによるニュースやサービス案内の多言語化も進んでおり、ここ4〜5年で新しく製造された車両は全国場所を問わず、日・英・中・韓の4か国語が標準となっています。

既存の車両についても、更新時のリニューアル改造の一環として多言語化対応を施している車両も増えてきました。ワンマン運転が導入されている地方の私鉄やJRの亜幹線でも自動放送や運賃表で日・英の2か国語を使用している路線がほとんどです。

また、これに加えて、各鉄道会社で独自に外国人客に対応しているサービスも増えてきています。パンフレットやリーフレット、雑誌の多言語化、ツーリストインフォメーションセンターの開設、現業スタッフの語学力の底上げ、外国人スタッフの雇用、外国人専用カウンター、案内所や駅コンシェルジュの配置などインバウンドに対する環境整備は目覚ましく進んでいます。

ここに加えて、現場の駅員や車掌がすぐに対応できるように急速に普及が進んでいるのが、次の項目で説明するポケトーク(翻訳機)やタブレットなどの端末です。