【第1章】先んずれば相続税を制す

第三者を交えた親子会議が賢い相続対策には不可欠

前回、相続について被相続人が健在なうちに、「ご家族で話し合いを始めることを強くお勧めします」と述べました(関連記事:死んだ後の財産分与を決めるのは、親の義務)。しかし、どうも家族だけで話をしても、なかなか埒が明かないという話もよく耳にします。

ほとんどの人は、一生のうちに何度も相続を経験する訳ではありません。つまり、ほとんどの人は、相続についてよく知らないのです。あまり経験をしたことがなく、知識に欠けている問題を、同じようによく知らない家族の人達と話をしても、なかなか議論は深まりません。

そこで、税理士や弁護士など、相続税に詳しいプロに相談すればいいという考えが頭に浮かびますが、残念ながらそうした士業の人達だけでは、賢い相続税の節税対策はできません。

税理士や弁護士など、いわゆる士業と呼ばれる人たちは、現状から適切に節税する方法は知っていますが、現状をより有利な状況に変えるための知恵は持ち合わせていないからです。後段でくわしく説明しますが、賢い相続税の減税対策をたてるためには、税金や法律の知識だけでは十分ではないのです。

特に、不動産投資をして課税資産を縮小する場合には、設計、建築、そして不動産の知識が不可欠です。不動産投資は事業ですから、資金調達も絡んでくるため金融の知識も必要です。逆に言うと、これらの知識が一通り頭の中に入っていると、どんな方法で問題解決にあたればいいのか、答えが出しやすくなります。

しかし、残念ながら、これらの知識を総合的に持ち合わせている人は多くはありません。私は、これまで多くの人から相談を受け、その都度、自分でも勉強し、先ほど挙げたような相続税の節税に必要な知識は一通り習得しています。

そのためか、相続について話し合う家族会議にもよく呼ばれます。ご家族の方だけだと、どうしても感情的になって、話が前に進まない相続についての話し合いですが、私が話を聞いて要点を整理し、スキームの提案をしてあげると、案外皆さん納得して、話し合いがすんなりと進みます。

もちろん、私も税金や法律のプロではないので、自分で考えたやり方が、法的に問題がないか、最終的に確認をしてもらいます。しかし、少なくとも私のような第三者が話し合いに加わっていた方が、議論が建設的になるのは確かなようです。


 

※本記事は、2018年7月刊行の書籍『「金融大工」が知っている 一番わかりやすい相続対策』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。