初秋の久住山へ

九月の週末、大分県の九重(くじゅう)連山(れんざん)へ行った。

その中でも、なんと言っても今回の目的は、その主峰と言われる久住山(くじゅうさん)(一七八六メートル)への登頂である。ここ九重連山は、九州でも古くから知られており、特に久住山は深田久弥著の『日本百名山』にも、日本が誇る名峰の一つとして、選ばれている。

但し深田氏は、久住山ではなく、九重山と称して紹介しているが。多くの愛好家にも親しまれて来た山で、私もその名前は、中学生の頃からよく知っていた。

しかし、久住と九重の違いについては、最近までよくわからなかった。何でも、九重と言う名は、全体を総称した言い方である、と解説されている。

そんな事もあり、久住山はかねてから登ってみたかった山の一つである。何しろ九州を三十五年間離れていたので、今回、やっとその機会に恵まれた訳だ。

そこで、妻と二人で出掛けてみた。私もこの秋で七十三歳、高い山へは登りたくても、そんなに永くは続けられないだろう。

行ける時に登っておこう、と。

この季節は、生憎(あいにく)と台風が次々と、日本列島を襲って来ている。

その一つが今、虎視眈々(こしたんたん)と九州を(ねら)っている。大丈夫だろうか?と思案したが、私共は、何が何でも登らなければならない、と言う使命などがあるわけではない。

そこで、駄目なら途中から引き返して、又、後日出直せば良いし、と気軽な気分で出かけた。先述の通り、九州の山々には馴染みがなかったので、数年前から少しずつ、トレーニングを兼ねて近辺の山に登っていた。

それで、何とか行ける様になった積りであった。先ず、トレーニングとレクリエーションの対象として、近くで一番高いのではないか、と思われる井原山(いわらやま)。そして、その付近の二丈(にじょう)(だけ)十坊山(とんぼやま)、少し低いが我が家から一番近い可也山(かやさん)などを選んで足腰の訓練をした。

そして今年は、梅雨明けの頃、二丈岳の隣にある(うき)(だけ)(八〇五メートル)に登って慣らした。

※本記事は、2021年3月刊行の書籍『孫の足音』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。