あるいは、その対応のための緩和策や適応策に要する額を複利で増やしているといってもよい。これと同じように、人口の定常化はフローだけでなくストックの問題でもある。

少子化を食い止めるためには出生数の増加または定常化に重点を置くことが有効である。

同じく、長い進化の歴史において哺乳類が育んできた愛着システムという生物学的基盤をこの数十年という短い期間で掘り崩してしまっているのは、化石燃料の浪費と似ている。

これらの状況に対応しつつ、若年層は低めの賃金からスタートする場合でも、子育てをする頃には、中間層にたどり着けるような社会。高齢者の金銭的収入は現役の中間層より少ないが、必要な社会保障給付を受けられるため、貯蓄が少なくて済むような社会。

事業に失敗してもやり直せる社会。そういう方向に進まなければなるまい。しかしながら、立ちはだかっている壁は高い。けれどもその壁の厚さは意外に薄いかもしれない。

※本記事は、2021年5月刊行の書籍『ベーシックインカムから考える幸福のための安全保障』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。