この頃に、連日のように送られてきた孝雄からのメール。

〈二人の女性へのメールの件ですが、どちらも「奥さんが送ってきた」と言っていますが、景子はその二人が誰かも知らないのだから、アドレスを盗んでメールなんか絶対にするような妻じゃないと説明しました。もし違っていたら、僕の信用はめちゃくちゃになりますが、景子のことを信じます〉

               ◇

〈俺は、奥さんに、浮気相手にメールされて、世間に恥を暴露されたバカ亭主だってよ!〉

               ◇

〈今日は、八人に謝った。いったい何人に謝り続ければいいのでしょう〉

               ◇

〈お前がおふくろにいろいろ吹き込んでくれたおかげで、俺は自分の親にバカ呼ばわりされ、最低人間みたいに言われ、子どもには悪口聞かせて、口も利かないようにして、俺をどんな扱いしてきた?

自覚がないから傷つけても平気なんだろうけど……。確かに今職場で噂されているように、家政婦くらいのことしかしてないかもな。主婦の心を持っていない〉

そして、このメールに対して私が、

〈もともと誰が悪いんですか? 自分のしてきたことを、よく考えてみてください〉

と返信したら、どうやら私が、瑠奈さんと明日香さんに、実はメールしていたということがバレてしまっていたようで……こんなやりとりになった。

〈肝心な時は嘘ばっかりついて、平気で人を最悪に傷つける人からのメールはいらないです〉

〈嘘ばっかり、長いことついていたのは誰ですか?〉

この後、私は言われた通り、本当に孝雄に一切メールを送らなくなった。

そして、当たり前のように彼を車で駅まで送り迎えすることもしなくなった。

「車を出してくれ」と言い出せない孝雄は、自分の足で二十分の道のりを歩いて出勤し、帰りはタクシーという生活を送ることになった。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『夫 失格』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。