骨格筋には2種類あることが知られています。瞬発系の運動に適した速筋と持久系の運動に適した遅筋です。

速筋は白いので白筋と呼ばれています。一方、遅筋は赤いので赤筋と呼ばれています。

この色の違いは、骨格筋内で酸素貯蔵を担っているミオグロビンタンパク質の量によります。ミオグロビンが多いほど赤色を呈するわけです。

速筋にはミトコンドリアが少なく、エネルギー源であるATPは解糖によって供給されています。

遅筋はミトコンドリアが多く、ATPはミトコンドリアでの酸素呼吸によって供給されています。

速筋と遅筋の組成は、アスリートの専門とする競技の特性やその経験年数などで大きく異なることが報告されています。

一般の人の場合は、速筋と遅筋が約50/50の比率であることが報告されています。

一方で、長距離および中距離ランナーは筋繊維の60~70%が遅筋で、反対にスプリンターは80%が速筋であるといわれています。

さらに、一流のパワーリフターやウェートリフターは、60%が速筋繊維であることが報告されています。

これらの組成の違いは、筋繊維タイプがトレーニングにより変化することに起因しています。

一般的に、持久的なトレーニングにより遅筋繊維の割合が増加し、レジスタンストレーニングにより速筋繊維の割合が増加します。

遅筋繊維は、持久能力(収縮を持続できる能力)が高く、酸化的筋繊維とも呼ばれています。一方、速筋繊維は一般人に比べアスリートに顕著に多いため、アスリートの繊維とも呼ばれています。

トレーニングにより筋繊維組成は変化しますが、増加するのは酸化的筋繊維である遅筋繊維のみです。

速筋繊維は、トレーニングでは増加しません。

前述のように、持久的トレーニングを行うと速筋は遅筋に変化します。

この遅筋化に関しては、よく研究が進んでいます。持続的な筋肉運動によって、細胞内エネルギーの低下、つまりATPの量が低下すると、ATPの分解産物であるアデノシン1リン酸(AMP)が増加します。

このAMPは、エネルギーセンサーとして働くAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化します。AMPKは、遅筋化に関わる遺伝子発現を制御するPGC-1αを活性化します。

その結果、筋肉の遅筋化が進行するわけです。遅筋化が起きている筋肉のなかでは、筋肉のなかの太い繊維を構成するミオシンが速筋タイプから遅筋タイプに変化します。このとき、筋肉内のミトコンドリア量、ミオグロビン量、毛細血管も増加します。

ミオグロビンは分子量約17,500の色素タンパク質で、赤血球のヘモグロビンが運んできた酸素を筋肉で受け取り、筋繊維に酸素を運ぶ働きをします。

遅筋の赤い色はミオグロビンに由来します。毛細血管が増加するのは、筋肉に多くの酸素を供給するためです。

そして、筋肉への糖の取り込みが増加し、脂肪代謝も増加します。この変化を遅筋化と呼びます。遅筋化によって筋持久力が向上します。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『誰も知らない紅茶の秘密』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。