今井さん編(スポーツ観戦)

サッカーアジア予選当日だ。

僕は、スポーツ観戦が大好きで、家で美味しいワインとチーズを片手に観戦する。

ゆりもスポーツ観戦が好きと聞いてはいるが、女性はあまり好きではない事は知っている。ゆりは実際どうだろうな。

夕飯の準備ができていて、ワインを飲むので腹八分。

おつまみを幾つか準備し、ワインもセットして、「着替えてくるね」。

僕は何で、着替えるのかと思いながらワインを片手にチーズを口にした時、ゆりが着替えて出てきた!

僕は、口にくわえたチーズを落としてしまった。なんとゆりの髪はポニーテール、上下ジャパンブルーのユニホーム。顔には、日の丸のペイント。意外とよく似合っている。手には、ボンボンと言うのかな、それを持って出てきた。

「チーズ落ちたよ」

君のせいだ。

いつもおっとりしている、ゆりからは想像が出来ない。

「今井スタジアム。サポーター代表、ゆりで~す」

僕は……言葉が出ない。

「俊さん、万歳して、着替えましょう!」

着替えさせられた……静かな観戦予定が……。まだ、その場を飲み込めない。

「応援、頑張ろう。フレーフレー日本! オー」

「ゆ…り……」

可愛い。意外とルールを知っている。

「今でしょう! シュート!」

「サイド、サイドでしょう」

「オフサイド! ……オフサイドはっきり分からないの」

試合を見るより、ゆりを見ている時間が長い。こんな観戦もある。楽しい時間だった。

翌週。

「俊さん、明日、孫達がお泊まりするでしょう? 大丈夫? 超うるさいから、覚悟していてね」

「おおー楽しみだよ」

金曜日の夕方。

ピンポーン

「はい、どなたですか?」

「はい、僕は浩也です」

「いらっしゃい。どうぞ」

可愛い小さい怪獣達が来た。

「ばぁばー」と駆け寄っていた。

「俊おじさんにも、挨拶しなさい」と浩輔君。

「おじちゃんじゃないよ。ばぁばーの好きな人だから、う~ん、そうだ! 俊じぃーだ」

「おおーいいね。俊じぃー。気に入ったよ。浩也君」

「今日一日、大変ですが、よろしく、お願いします」

「僕は子供と過ごすのって、初めて。楽しみにしていた」

「お母さん、これ着替えです」と二人の優しいお嫁さん。

「たまには、夫婦で時間を楽しんでね」とゆり。二夫婦は帰って行った。

それから、忙しい時間と楽しい時間が過ぎた。子供のパワーは底知れない。