翌朝6時、指定された寺院へいくと、すでに、昨日のサドゥーが待っていた。疑っていた自分に嫌気がさした。

サドゥー「おはようございます、よく眠れませんでしたね」

はっはっ、と、見透かしたように笑った。

弥生「おはようございます、そんなことありません、よく眠れましたよ。だって、インドの人々は親切ですもの」

負けずに嫌味たっぷりで、あっはは、と、笑い返した。

(10万も、ぶんどりやがってぇ)

少し遅れて、サドゥーの弟子(男3人)が(これでもかと荷物を積んだ)ロバをそれぞれ、1頭ずつ引き連れてきた。1ヶ月分の食料と水、慣用テントなどなど…。

サドゥー「弥生さん、これロバ、これ、弟子たち、さぁ、いきますね」

弥生「えっ、な、名前は」

サドゥー「名を名乗らず、言葉を口にしない、と、いう、修行中です。気にしないでください」

弥生「ああっ、そうなんだ、よろしくお願いします」

弥生は頭を深々と下げた。サドゥーにも、ありがとうございます、と、感謝を伝え、深々と頭を下げた。これだけの準備をしてくれたのだ、自分の卑屈さに嫌気がさした。

その裏返しに、手を合わせて、深々と頭を下げたのだった。その行為もいやだった、仏教徒でもないくせに、宗教に懐疑的なくせに、……。

あー、もう、いや、心はドロッ、ドロッ、になりかけていた…。

サドゥー「弥生さん、大丈夫です、帰ったら、寄付して下さい。それでOKです」

ふふふふっと笑った。

弥生(えっ、なななぜ、わかるの、寄付で解決なんだぁ)

「ええっ、もちろん、そのつもりでしたの、心配ご無用ですから」

(このサドゥー、只者じゃないわ、気をつけなければ)途中、もう1人をピックアップするというので、村はずれの別の寺院にいくことになった。

弥生「また、修行中のサドゥーかしらん、こんどはどんな修行しているのか興味津々だわ」

寺院の門で待っていたのは、小さな8歳に満たない女の子だった。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『ヒマラヤ聖者の秘宝』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。