とりあえず回覧する

「1.01の法則」を実践する最も簡単な方法がこれだ。例えばあなたが地中に建物を建てるために土を掘る土工事の施工計画をすることになったとする。ダンプの台数、重機や誘導員の配置に加えて、ゲート前でのタイヤ清掃、品質管理体制など、様々な条件をクリアしなければならない。

全部ひとりでできれば一番いいけど、熟達した現場所長のような人でさえ、人間だから見落とすことがある。当然、若手は見落としがあってもおかしくないのだけど、だからといって失敗していいわけがないから、多くの現場監督を苦しめる。

重責をひとりで背負い込み、終電間際まで深く深く計画を練ったあげく過労状態になる。そうまでして練った計画が思ったよりうまくいかなかった時には立ち直れないほど精神的なダメージを受けてしまう。2017年に国立競技場建設の現場で現場監督が過労死した問題も、根本的にはこういう流れがあったと僕は見ている。

スマートゼネコンマンを目指すなら、今の自分にできる範囲の計画をした時点で、速やかにその計画を事務所内に回覧しよう。できれば文書より、図面がいい。

あなたが深く悩むのではなく、所内の同僚、上司、所長たちの時間を1%=5分ずつ借りるのだ。すると、あなたのもとに返ってくる頃には、様々な立場から鋭いチェックがされているだろう。これは、言い換えればより精度の高い計画を導くヒントが書かれている状態だ。そのチェックに応えていけば自ずと精度の高い施工計画ができる。

それに、回覧が返ってくるということは、上司は確認して印鑑なりサインをしているはずだ。もし上司から何も指摘がなければ、その計画を認めたことになる。それで色んな失敗が起きても、組織上あなたに責任はない。

と表立って言うと怒られるけど、少なくとも「知らなかった、あいつが勝手にやった」とは言わせない。だって、上司もサインをしているのだから。それでも知らないと言うなら、上司の方が職務怠慢だろう。悩む前にさっさと回覧しよう。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『スマートゼネコンマン~残業なしで成果を出す次世代現場監督~』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。