種男百五番

種男百五番のことに話を戻そう。種男百五番は他の種男たちとは違うところがあった。それは、出会う女たちを愛そうと努力することだった。

このような癖のある種男が一番やっかいなのだ。種男たちは、常に機械的で十分だと言われている。あまり感情移入をしない上辺だけの通りすがりの男に徹することを教育されている。

男と女の違いは感情的であるかないかであり、女がいかに感情的に行動してもその感情に流されないようにトレーニングされている……はずだった。

種男百五番が関わった女で一人、別れ際に泣いて彼に帰らないでくれとすがった女がいた。

この女の涙を見たとき、種男百五番は、規則を破っても一緒にもう一日だけいてやりたいと思った。もちろん、その女が泣いてすがった時間は時間をワープして後でその女の記憶を修正したが。この女の取り乱した姿が頭の隅から離れない。

この日を境に、本来の男と女という関係のことばかりを繰り返し考えている。この日以来、種男百五番は、本当に好きだなと思う女とでないと男と女の関係になれなくなってしまった。

美紀はこの種男百五番の話をタイプしながらセーブボタンを二~三分ごとにすばやく押すことを心がけた。保存しないまま何かが起こったら今、まさに目の前にいる男の話を全て消去してしまうことになる。

美紀の頭の中は、将来の日本のあり方、指針でいっぱいであった。男と女は果たして両方必要か。

この国にとって生きている男は、果たして必要か。

※本記事は、2021年3月刊行の書籍『種男貸し出し中』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。