第一章 貸金返還請求 2

妻の親戚にお金を貸したが返してくれないという五十代の男性からの依頼を受任した。

内容証明郵便で請求したが期限までに支払いも連絡もなかった。依頼者に報告の電話をする。

「訴訟を起こしますか?」

「ぜひお願いします」

「先日も説明しましたとおり、判決が出ても支払ってこなかったら強制執行の手続が必要になります」

「分かってます」

強制執行をするためには対象となる財産を把握しておく必要がある。

相手は会社員で勤務先も分かっているので、給料を差し押さえることができる。

給料を差し押さえる場合には、原則として給料の四分の一の金額を毎月の給料日ごとに勤務先から直接に支払ってもらうことになる。

裁判期日の五日前になって、相手が提出した答弁書の写しが簡易裁判所から送られてきた。

こちらの請求内容はすべて認めたうえで三十六回の分割払いを希望する内容が記載されていた。

代理人は就けずに相手方本人だけで裁判の対応をするようだ。

依頼者に確認したところ

「十二回払いなら和解する」

との回答だったので、

「もし相手が三十六回払いで譲らなかったらどうするか」

についても確認すると、

「どうしてもだめなら三十六回払いでもかまわない」

とのことだった。

弁護士を代理人に就ければ当事者本人は原則として出廷する必要はない。もちろん代理人といっしょに出廷することもできる。

この依頼者は出廷しないとのことなので、事前に確認しておく必要があった。裁判中に電話で確認することもできるのだが、依頼者によっては仕事でつながらないこともある。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『アフターメッセージ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。