店から路地に入ろうとしたところ、私の友達2人連れとばったり。あらまあ、と夫に2人を紹介。大勢の人出でしたが、知った人に会ったのはこの2人だけでした。

路地を入って奥の左手に、この呉服屋さんの元の米蔵を改装して作られた「夢サロン空間はしまや」があります。

ここは蔵が三つ並んでいて、先ほどの楠戸邸の奥さんの説明を以前聞いたところによると、手前の低い床の蔵が漬物蔵、少し高くなった真ん中の蔵が呉服を包む畳紙を入れる紙蔵、一番床を高くしてあるのが大事な米を入れる米蔵だったということです。

「夢空間はしまや」は元の米蔵を改装されたもの。石段を7、8段くらい上がったところにあります。ここには藍染めの布を貼ったような屏風が二双、ピアノのそばに展示してあり、喫茶でお茶を飲んでいるお客を横目に見せてもらい、飲んでいる人は落ち着かないだろうなと思いながらぐるっと回って出ました。

普段は閉め切ってある先ほどの路地の突き当りの扉をこの日は開けて、庭の奥の突き当りにある、楢村設計室に貸して改装している部分も公開されていました。

楢村さんが1階応接室の土間に座って、来るお客をもてなしていました。実は夫の妹がこの楢村さんの同級生なので、よく話を聞いているのです。古民家再生運動をしている楢村さんが改築した民家の数々が、写真パネルで展示してあり、建物の雰囲気を残しながら今に使えるモダンな内装に変えていく様子を伝えていました。

楢村設計室を出るとそこは楠戸邸の北側の道路で、そこからまたさっきの東町の通りに引き返して、中村邸の珍しい仏手柑ぶっしゅかんという、仏様の手、というよりはバナナの房に似た柑橘類の枝が生けてあるのを拝見しました。「西遊記に出てきたのを知ってるよ」、という小父さんが見物していました。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『夫と歩いた日本すみずみ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。