その後、しばらくツンの姿が見えませんでした。あまりの忙しさに実はくちばしを傷めてしまったのです。谷のほとりのやぶの中で静かに休んでいるツンをヘンはやっと見つけました。

「大丈夫?」

ヘンが聞くと、ツンは、

「もう大丈夫」

と、元気に答えました。

ホットケ山に住み着いたツグミたちがたくさんの卵を産みました。ツンはまた忙しくなりました。こどもを育てるツグミたちにはもっと大きな家が必要だったからです。ツンのくちばしは今ではすっかりきたえられていました。以前より、ずっと丈夫で、強く、立派になっていました。ツンは朝早くから飛び回ってツグミのこどもたちが喜びそうな場所を探しました。見つけると、早速工事をはじめます。それはそれは手際よく次から次へと見事な巣を掘りぬきました。

夜は、フクロウのフンの出番でした。たくさんのツグミのこどもたちが気持ちよく眠りにつけるよう、夜明けまで歌い続けます。それでツグミのこどもたちはぐっすり眠ることができました。

フンもあまり一生懸命歌いすぎてのどの調子がわるくなったことがありました。しかし、ヘンが良く効く薬草を調べて、探し当て、届けてくれたのでそれでよくなり、また歌い続けることができました。

そのころ、ミミズたちは相変わらず土の中でせっせせっせと自分たちの仕事に励んでいました。それで、ホットケ山は、いつも美しい花が咲き、木はつやつやとした葉をいっぱいつけ、鳥たちのための木の実はどっさりでした。

※本記事は、2021年3月刊行の書籍『思い出は光る星のように……』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。