種男百五番はよくしゃべる男だった。彼は乳母に育てられ、本当の母親を知らないし見たこともないそうだ。種男たちの幼少のころはあまり知らされていないが、種男百五番によると、幼いころから種男たちは英才教育を受け、最低三ヶ国語は話せるよう教育されている。性教育に関しては、どの教科より時間が費やされる。常に彼ら種男は特別に選ばれた男たちで、むやみに男の数を増やすのは日本国にとって良くないこと、どんなデメリットが生じるかを徹底的に頭に詰め込まれるらしい。

種男同士の交流は一切なし。女以外と話したことも接したことも生まれてから一度もないと言った。種男たちの教育は全て個人レッスン形式で行われ、彼らがどこに住み、誰が教育しているかは、国家最高機密であった。

幼いころは他の子供(もちろん女の子)と遊ぶ機会も与えられ、住居のあるビル内部には、遊技場、プール、テニスコート、ミニ遊園地、ジム、映画館、ゴルフコース、デパート、スーパーマーケット、五つのレストランも完備している。一人の種男に対し三千人のスタッフが働いている。

種男百五番が今までに出会った女の中には、彼が本気で愛してしまった女が十二人いるという。

この十二人と話した内容や行動は後で、三時間ごとに時間をワープして修正しなければならなかったらしい。種男百五番は、この種男という自分の役割に疑問を抱いているという。

種男百五番の疑問とは、

一、男と女の数は同じでなくていいのか。

二、女は、本当に男を必要としていないのか。

三、自然の摂理に逆らった種族保存をこのままあと何年続けられるのか。

四、男が現在も三百年前と同じようにこの世に存在していたらこの国の形態はどうなっていたか。

五、男と一切交流したことのない種男たちがもし交流、意見交換をするようになったら、彼らの意識はどう変わっていくのか。

六、もし、種男たちが全く存在せず、精子バンクだけの世界になったらどうなるか。

七、男の役割は種男としてだけの存在なのか。

美紀は種男百五番の疑問を箇条書きにしながら、彼の葛藤を手に取るように理解し胸が苦しくなった。美紀が今まで考えもしなかった日本が、そして世界が直面している問題を目の前につきつけられたような気がした。

※本記事は、2021年3月刊行の書籍『種男貸し出し中』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。