序 情報化・電動化・知能化の発展段階

振り返って、情報化・電動化・知能化それぞれの技術フェーズに対応する技術の入れ物、即ち、テクノロジー・アカウントは、それぞれカネ・モノ・ヒトに象徴される。

情報化はデータログの活用が鍵となる。そして極端だと思われるかもしれないが、大半は結果的にカネと言えるし、マネタイゼーションの目的がそうでなかったとしてもなお、データログはカネに行き着く。

現代の資本主義社会、あるいは共産主義社会、いずれを見ても、もはや物々交換はない。東西冷戦末期の東欧が当時のソ連と原油のバーターをモノで行って破綻していった世界はもう遠い昔のことだ。

その前の大航海時代、あるいは帝国主義時代から情報よりも機械文明が資本蓄積することでモノの機械化軍事力の拡大へと突き進んだときであっても、最終的には物質的繁栄の要素であるモノをどこかでカネとはき違えたために、領土拡張や支配の現実は大義を失っていったはずだ。

そして今や、「デジタルによる情報化」の席巻により、カネを介在させたデータログの目的が国家をも巻き込んだマネタイゼーションの世界となった。私欲はもちろんのこと、社会福祉・公共の利益のためといえども、国や地方公共団体、そしてNPOや財団などの活動はすべてカネである。こう言ってしまえば身も蓋もないのだが、情報化の実務はカネなのだ。

第一章「情報化がもたらすフラグメンテーション(断片化)」では、大量のデータログが生み出す情報分析が外部経済化してゆく現在のディスインフレーション経済構造とそのために低迷する景気循環を提示し、そして世界共通の課題となりつつある国家資本主義における通貨主権の行き着く先を描きたい。

同時に今後の「情報に基づく電動化」はエネルギーの活用が課題となる。

ハードである半導体の飛躍的な発展は情報化社会をもたらし、情報がカネを生むという世界を人々の身近で実現させてきた。電気でモノが動く、それが電動化であるが、これまで機械としてのモノの電動化には多大なエネルギーを費やしてきた。

半導体の小型化や省電力化が大量生産に結びつき、大量の機械を電動化してゆく。希少金属に行き着く半導体を改善する要素技術は、0と1のデジタル化のもとに加速してきた。そのために機械の大量生産で必要な多大なエネルギーを費消し、半導体による情報に基づく電動化はそれぞれの機器の使用においてもさらに大量の電力を必要とする。

このような力押しの電力需要がこの二十一世紀の便利で効率的な社会を機械文明の行き着く先として地球の一部に作り出してきた。その旧世紀から続く機械文明の壮大な実験が人口十四億人を抱える中国だ。