私は、少し前のめりになり、聞き返しました。

「一つ目の提案は、今すぐ仕官頂く。ぜひ、将軍家のために一緒に働きましょう」

(やったー就職が早くも決まりました。二次面接もなしだ。それも将軍家に、でも次の言葉が少し不安です)

「しかし財源がないので無給でお願いします。できれば将軍家に寄付もお願いできないでしょうか。明智殿のように立派なお家柄であれば、親戚の方に土地持ちの領主様などいらっしゃるのではありませんか?」

「(この時は、帰蝶様が嫁いだ、まだ海のものとも山のものともつかない信長様のことは思い浮かびませんでした)いません、また無給では無理です、自分の土地であった美濃の明智の荘は、横領されました。妻も子供もいます」

(人の足下を見やがって、しかも交渉上手です。煕子に用意して貰った懐のお金も取られるかも知れません。気を付けねば)

「大変に残念です。今は将軍家に仕官できないことは分かりました。しかし、重要なのは二つ目の提案です。明智殿は、これから各国の有力な大名を回り、再就職活動をするとのお話でしたよね。明智殿が、再就職できた暁には、その就職先の大名に将軍家の後ろ盾になるように説得してほしいのです。これからも、連絡を取り続けましょう」

(人の心を読むことが得意な私には分かります。面接に来た人、全員に"同じこと"を言っているな、こいつ)

でも私は、

「承知しました。密約ですね」

と回答しました。

※本記事は、2021年5月刊行の書籍『弑逆者からのラブレター 「本能寺の変」異聞:明智光秀と煕子』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。