2.入院中、髪を切る

倒れてから髪を切っていなかった。

倒れるなんて思ってもなかったのと、年末に美容室に行く予定だったので、髪も伸びきっていた。その髪が右側の顔に触れると少し痛いと感じるようになっていた。

右半身は感覚を取り戻していく中で、少しの刺激にも過敏に反応するようになった。『髪を切りたい』と思いながら車椅子で廊下を通っていると、ふと掲示板に目が留まった。

何と、月に一度出張で美容師の方々が来られるとのこと。1月、まだ予約取れたらカットしてもらえるかもと思い、スタッフに尋ねると、

「大丈夫ですよ。混み合いますけど、リハビリとも調整しますので」

と言ってくださった。無事、予約も取れ、午前中、美容師が病室まで迎えに来てくださった。私は、

「ありがとうございます。お世話になります」

と言った。美容師は、

「いえいえ、シャンプー、カットでよかったですかね?」

と足早に車椅子を押してくれる。

「はい、お願いします」

と答えつつ、『これだけ急いでいるって事は、かなり人が多いのかな?』と感じた。到着して驚いたことは、同じフォルムの女性が皆、目を閉じて、じっと座っていらっしゃったことだ。

私はシャンプーしていただき、行きつけの美容室のカットラインのまま、毛先を整えていただき、あっという間に終了した。帰りも、数名の女性達がまだじっと座っていらっしゃった。

女性は、おいくつになられても、お洒落だ。急いでリハビリに行くと、療法士が髪を切ったことに気付いてくださった。

倒れてから、少しだけ自分を取り戻せたかな、と思えた1日だった。

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『アイアムカタマヒ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。