所有者がいるのに空き家のケース

これはその実数の把握がむずかしい。

特に大都市近郊ではお互いが隣人に無関心であり、プライバシーを侵されたくないという風潮が広がっていることもあり、近所の人に尋ねても実態がわからないからだ。

戸建もそうだがマンションなどの共同住宅にさらにその傾向が大きいと聞く。なぜ自宅があるのにそこに住まないのか、それぞれ個人や家庭の事情があるが、それ以前にそこに住み続けたくない、あるいは住み始めた当初は良かったがその後住みたくなくなってきたといった理由があると思われる。

それは以下のようなものではないかと筆者は推測する。

1.生活を続ける上で不便になった

若い頃、住み始めた頃にはそれほど感じなかったことが高齢化に伴い不便に感じるようになる。ひとつは移動に関することで、少々の距離や坂でも苦になってきたとか、車の運転がむずかしくなり買物や通院、趣味の集まりなどに行きにくくなったことなどだ。

もうひとつは、住民の数が減ったために近くにあった商店や銀行が撤退し、さらに路線バスなどが撤退や減便し、買物などの用務で遠方に行かなければならなくなったことなどがある。

2.住む家が老朽化してきた

老朽化に伴い安全性や快適性が損なわれてくる。修理や建替えの費用が工面できない、売りたくてもなかなか希望する価格では売れないなどからとりあえず家はそのままにしておいて親族の許などに身を寄せる。

特に共同住宅の場合は修理や建替えが自分一人の意思では決められず、そのままになっているケースが多いと聞く。

3.近所づきあいがなくなってきた

これも若い頃は子供などを通じて盛んだった近所づき合いが、高齢化し一人去り、二人去りしているうちに周りに友達がいなくなりそこに住むことが寂しくなったケースである。

4.災害に対する見方が変わってきた

これは特に最近のことだが、自然災害の増加とともに、自分の家や住む地域が災害にどの程度耐えられるのかを気にする人が増えたことによる。自治体の発行するハザードマップなどで地震だけでなく、豪雨などによる浸水や土砂災害の危険地域であることがわかると、そこを離れたいという気持ちになってくる。

これも家の老朽化と同じように、売りたくても売れないので、家はそのままにして長期的に、あるいは恒久的に親族の許などに避難する人が増えてくる。