煕子の内緒の話

重くてごめんなさい。あの頃、ご飯がおいしくて、いつもお腹が空いていたの、食べ過ぎでした。少し? 太っていたかもしれません。二人分だったしね。背負ってもらいながら、色々とお話ししたよね。

「全て失っちゃったよ、家も土地も何もかも」

「家族がいるでしょ。これから家族をドンドン増やすわよ! それに彦ちゃんなら大丈夫! 煕子が見込んだ人だから」

「子供は何人欲しい?」

「お腹の中の子も入れて、そうだなあ、9人は欲しい。でも段々と疲れて足が上がらなくなってきた、少し休んでいい?」

「駄目、まだ美濃の領内よ。追手が来るわ。もう少し頑張って」

「旅に出て仕官先を見つけ、できるだけ早く煕子たちを呼び寄せる」

「手紙書いてね、必ず良い仕官先を見つけてね、できるだけ早く煕子たちを呼び寄せてね」

「彦ちゃん、絶対に浮気はしないでね、分かっていると思うけど、したら殺すわよ」

「う、浮気なんかするわけないよ」

とかね、彦ちゃんの背中は汗でビチョビチョだったよね。

彦ちゃんは、途中で何度か気絶していたけど、あの時は、本当に楽しかったです。ありがとう。でも、行け彦太郎! いや明智十兵衛光秀! 行って立派なお殿様を見つけ、早く出世しろ! 家族を楽にさせろ!

※本記事は、2021年5月刊行の書籍『弑逆者からのラブレター 「本能寺の変」異聞:明智光秀と煕子』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。