ちょっと待てよ。鰻でなくてもハーフ&ハーフって嬉しいよな。よくプレゼントで花を買いにくるお客さんたちが言っていた。喜ばれて見栄えがいいのは花束だけど、数日後には枯れて捨てられちゃう。残るものもあればいいのにって。

今は店頭にもインターネットの通販にも、生花は生花、プリザーブドフラワーやオイルにつけてボトルに入れたハーバリウムは別のカテゴリーで売っている。だが両方セットにしたらお客様の要望は叶えられる。そして売り上げも良くなる。

特に夏場は生花を買う人が減るけど、セットで買ってもらう機会が増えれば、うちの店の花の持ちがいいのをわかってもらえるチャンスになる。

「あれ? 俊平さん。鰻食べたらなんだか顔色が良くなったみたいよ。やっぱ大ちゃんのところの鰻はパワーつくのね。私もお店を開ける前にうな丼作ってもらおうっと。ご飯少なめで鰻は大きいやつね。それと今度の丑の日、お客さんに鰻弁当を差し入れたいから予約してもいい?」

「もちろんです。ありがとうございます。食べに来ていただいてもいいですけど、お弁当ですね」

「そうなのよ。できたてが一番なんだけど、そのお客さん、この間うちの店から出てすぐの階段で酔って転げ落ちて骨折しちゃったのよ。それで安静をとって入院しているんだけど骨折だけだから食べ物は自由なの。だからお見舞いに」

「あ、月子さん、ちょっと思いついたことがありまして、費用はいただかないので試験的にやらせていただきたいのですが」

「なになに? お金を払わなくていいなら何でもオッケーよ」

「お見舞いにお花ってつき物じゃないですか。生花のフラワーバスケットとプリザーブドフラワーのセットをお持ちいただけますか?」

「え? そんな両方もだなんていいの?」

「それって、もしかしたらハーフ&ハーフですか?」

大将が気づいた。

「そうなんだよ。大将の鰻で思いついたんだ。生花だけだと枯れてしまって思い出として残らないってお客さんから言われていて。それならばハーフ&ハーフ」

「それ! いいわ~。だって退院した後も私がお見舞いに行ったことはそのお客さん、プリザーブドフラワーを見るたびに思い出してくれるし、そしたらお店にも来てくれるだろうし」

「なるほど。月子さん、さすが経営者。それなら今月の家賃の支払いも大丈夫ですね」

大将が持ちあげる。

いける!

これなら今ある商品で売り上げアップになるはずだ!

今日は早く帰って銀行に提出する経営改善の資料を書こう。そして明日の朝一番で銀行に行こう。

おっと、融資もメインバンクだけじゃなくて、他にもあたってみようかな。

最近挨拶に来てくれた信用金庫の営業さん、笑顔が爽やかで感じのいい人だったしね。

こちらもハーフ&ハーフで。

※本記事は、2021年3月刊行の書籍『微笑み酒場・花里』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。