1.行動を介する治療法

認知症の人が異常行動を起こすには、それなりの理由や誘因があるように思われます。したがって、異常行動の理由や誘因を探し出して、それらを取り除く努力をすることが望まれます。

たとえば、認知症の人が間違いをした場合、間違いを指摘して叱ると急に怒り出すとか、落ち込んで食事をしなくなることがあります。その場合、間違いを指摘・叱責しないことが大切です。

多くの品数の食事を出すと、認知症の人が混乱して食事をしなくなることがあります。そのような場合には食事を簡単にして、1種類のみの食品にすることも勧められます。

尿失禁のある人には定期的な排尿の日課を作ることによって、尿失禁の回数を少なくできたこともあります。入浴をいやがったり、怒ったり、暴れるような認知症の人には風呂の形や位置を変えたり、ヘルパーが家にいる時間帯に入浴させたり、入浴時に音楽を流すなどの配慮もいかがでしょうか。

介護者が行動療法を学習して、興奮による破壊行為に応用したところ、破壊行為が減ったという報告もあります。上手く着衣できないので、怒り出し、いやがる人には衣服を簡略化して、間違いなくできるようにすると、素直に着脱するようになります。

このような行動療法をビデオ・テープに撮って、興奮をしているアルツハイマー病の人に見せたところ、知能テストの成績は薬物を投与した人より良くなったという報告もあります。とくに、行動療法は抗精神病薬のような副作用がないため、薬物治療に先だって試みるとよいでしょう。また、薬物治療をしていても行動療法を同時に併用することも大切です。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『認知症の人が見る景色 正しい理解と寄り添う介護のために』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。