(2)夜更かしには要注意! 睡眠の質を高めよう!

不眠症に悩む日本人は5人に1人ともいわれており、年々増加傾向にあります。不眠症は、不規則な生活や病気などがストレスとなって、自律神経のバランスが乱れることによって起きる現象です。以前はそれほど多くありませんでしたが、最近では職場をはじめとした生活環境によるストレスなどによって、若い世代でもいわゆる睡眠導入剤を処方する方が増えてきたように思います。

ストレス社会といわれている今日においては、いかに日常のストレスを緩和していくかということも、長い目で見ると健康長寿とのかかわりも大きいと思います。通常、睡眠時には副交感神経がはたらくのですが、ストレスを感じているときは交感神経が優位にはたらいていますので、副交感神経を優位にはたらかせる工夫をして、自律神経のバランスを整えることも大切です。

比較的簡単に副交感神経を優位にはたらかせる方法として、少しぬるめのお風呂にゆっくり入り、リラックスして深呼吸するのも良いと思います。睡眠不足は疲れやすくなったり風邪を引きやすくなったりと、免疫力の低下につながりますから、質の良い睡眠をとれるような工夫をすることが大切です。

睡眠はある程度の睡眠時間を確保することも重要ですが、睡眠時間が長いというだけでは疲れは取れません。質の良い睡眠も大切です。

睡眠の質を高めるためには、たとえば、日中は太陽の光を浴びたり、ウォーキングや軽いストレッチなど適度な運動を行ったり、20分以上の昼寝をしないことや、夜はお酒やカフェイン類を控えめにするなど、意識して生活リズムを整えるだけでもずいぶん効果が期待できます。

(3)副作用のある薬にも注意! 使用している薬を再チェックしてみよう!

次に、お薬についてですが、医師に処方してもらった薬を正しく使用していれば問題ありませんが、人によっては副作用があらわれることがありますので注意が必要です。

特に注意しなければならないのは、筋肉の緊張を緩める作用のある薬を使用する場合です。というのは、高齢者の場合、夜間にトイレに行くとき、足元がふらついて転倒してしまうことがあるからです。高齢者の転倒は、骨折により寝たきりになったり、打ちどころが悪いと命を落とすことにもつながるため、深刻な問題です。

また、高齢者は若い人にくらべて薬物代謝機能が低下しているので、朝方や日中時間になっても薬の効果が持続してしまう「持ち越し効果」と呼ばれる症状が出ることがあります。朝方や日中時間帯にボーッとしていたり、昼過ぎまで寝てしまうような場合は、持ち越し効果を疑ってみる必要があります。

睡眠の質の低下やある種の向精神薬の長期使用は、認知症との関係も指摘されていますので、特に高齢者の方にとっては対策が課題です。認知症の中で最も発症率の高いアルツハイマー型認知症は、脳内にアミロイドβと呼ばれるタンパク質が蓄積することにより発症する病気です。

このアミロイドβは脳が活動したときに発生する老廃物の一種で、ノンレム睡眠中に脳内からの排出が活発に行われるという性質を持っているので、睡眠不足でノンレム睡眠の時間を確保できないとアミロイドβの蓄積が進み、当然、アルツハイマーの発症率が高くなるわけです。

昨年(2018年6月)、国立長寿医療研究センターなどの研究チームが、夜更かしをする75歳以上の人は、認知症発症のリスクが高まるとの研究結果をまとめ、日本老年医学会で発表しています。

そして、この研究については同年6月13日付の朝日新聞にも掲載されました。認知症の有症者数が急増している現在、認知症発症のリスクに対する睡眠が持つ影響力への注目度は、今後より高まりそうです。認知症については後に詳しく説明いたします。

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『人生100年時代健康長寿の新習慣』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。