物語のなかで、私はほかのタイプの人生を生きます。それは映画やテレビドラマでもいいのですが、できの悪いテレビドラマを見るより、本を読んだほうがイマジネーションを働かせることができます。

オーディオブックでもKindleでもなく、アナログな単行本。それを病院の待ち時間やちょっと空いた時間に読めるようにします。テレビ番組では、ナショナルジオグラフィック(TV)の「カー・SOS蘇れ!思い出の名車」が大好きです。

「水戸黄門」みたいないつも同じ流れの番組で、最後のシーンで私の涙をさそいます。体を悪くして名車のレストア(再生)ができない人の所有する車を、家族の依頼により完璧にレストアするのです。

持ち主が病気を抱えているなどの事情で、サビだらけのスクラップ車同然の名車が新車のように蘇り、それをサプライズで持ち主にプレゼントします。家族や友人の前で完璧なレストア車を渡されるのです。本人はレストアしていることを知らされていないので、車を渡されると感動します。そして私も一緒に涙します。

このような共感は、その人の気持ちを完全に理解できるわけではありません。しかし、その人の苦労を想像します。他人の人生の苦労など他人にわかるわけはありませんが、「苦労したんだね。ご苦労さん」という感情を私は大切にしています。他人の悲しみも喜びも素直に受け入れ、人に本当の意味で優しい人間になりたいとも思います。それが私の社会への感謝の印かもしれません。

マーケティングや経営に直接的に関係ないかもしれませんが、私は、この感情を大切にしています。ですから、想像力は高いと自分でも感じます。それが正しことかどうかわかりません。

しかし、他人の感情を知ることはマーケティングには重要だと私は考えます。読書やドラマ鑑賞は、想像力を養うツールだと私は思います。良い小説に出会ったときは感動し、自分の生き方にも影響します。そして、仮説を立案する能力が高まります。

※本記事は、2021年3月刊行の書籍『惹き寄せるチカラ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。