専門家から敬愛されるコールと、大衆に愛されるダンス作りに秀でたジーンの出会いはこれきりになったが、残念ながら二人の間に新しいものは生まれなかった。

途中、コールが肝炎のため仕事を退き、ジーンが一曲振付けることになった。与えられたナンバーは“どうして俺はあの娘に首ったけなんだ”。マーロン・ブランド主演で一九五三年にヒットした映画「乱暴者(あばれもの)」をパロディーにしたこのナンバーは、皮肉なことに作品中で最も評価の高いダンスとなった。

革ジャン姿のバイカーの一団がダイナーにやって来る。店のウエイトレスがミッツィ・ゲイナー。リーダーのジーンが口説こうとするが彼女にじらされる。喧嘩から次第に心が通い合い、互いの気持ちは高まるが、仲間が呼びに来てジーンは去る。照明が落ちる中一人残された彼女が寂しくたたずみ、ダンスは終わる。

セットはカウンターにジュークボックス、数個のテーブルと椅子のみと簡素だが、殴り書きのように壁に塗られた赤のペイントが斬新でゴージャス感さえ漂う。ゲイナーへのからかいから争いを経て次第に打ち解けてゆくまで、心の変化が自然に描かれ、気持ちのやりとりまで読み取れる。

途中テンポを上げたダンスで二人の喜びを表現するが、肩や背中を固めて踊るスタイルがジーンのこれまでの振付けにないモダンさである。彼自身も生き生きとして体のバネが利き、踊ることを楽しんでいるように見える。ゲイナーのダンスもシャープで切れがあり、彼女のキャリアの中でも最上の部類に入るパフォーマンスとなった。

一九五七年十月に公開された「魅惑の巴里」はヨーロッパで評判が良く、計三八六万五千ドルの興行収入を得たが、製作費がかさみ最終的に一六三万五千ドルの赤字を計上した。時代を代表する音楽はすでにジャズからロックへと移り変わっていた。ジーンのMGMとの契約は終了した。

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『踊る大ハリウッド』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。