右手での筆記

1月下旬、右手の回復を信じて、震える手で毎日のリハビリ予定をノートに書き始めた。

右手は、ほんの少しずつ動き始めたが、ボールペンを持つことすら困難な状態だった。それでも麻痺した右手で字を書いてみようと思ったのは、同じ病室の隣の女性から掛けていただいた言葉だった。

その女性は毎日、リハビリの予定をノートに書かれていた。私と同じ利き手である右手が麻痺されていた。それでも毎朝、ペンを握りノートに向かっていた。

「凄いですね。右手で書かれているのですか?」

「下手な字だけどね。でも何もしなかったら、ますます動かなくなるじゃない。だから、こうして書いているの。宮武さんもやってみたらどう?」

「いやぁ、できますかね?」

「はじめは書けなくても、毎日やっていると少しは書けるわよ。うまくなくていいのよ」

拝見した文字は、きちんと読むことができ、しっかりした文字だった。

麻痺した手で、ここまで書けるのかと、驚いた。

この会話の後、すぐに車椅子で売店に行き、ノートとボールペンを購入した。

車椅子に座ったまま、膝の上にクリップボードを置きノートを広げて留め、その日のリハビリ予定を書いてみる。

震える右手は、倒れる前に文字を書いていたことを取り戻そうと動いた。しかし、書かれた文字はノート5行分の幅を使い、ヨレヨレと曲がりくねっていた。

『毎日続けていたら、少しは上手くなるだろうか?』

リハビリ室だけのリハビリでは足りないと思っていたので、右手に関しては病室でもできることをしたいと思っていた。

ノートにリハビリ予定を文字で書くことは、この日から退院まで、毎日続けた。