次に、その足で近所の「伊都(いと)の湯どころ」に行き入浴、一年の(あか)を落とす。ここは車で十分も走れば良い距離で、温泉ではないが、汲み上げた地下水で湯を沸かす健康センターだ。我が家の風呂より、広々として、露天風呂など気分が良い。

妻は台所で髪を振り乱して調理中なのに、いい気なもの。夕食は、亡父の頃から年末の恒例となっている河豚(フグ)料理のご馳走。近所のナントカ水産で調理してくれるので、奮発して買い込んだ。

まあ、こんなスケジュールだが、更に紅白歌合戦が終わると、妻を加えた三人で、付近の神社に初詣に行っている。日付が変わったとは言え、冷え込んでいる午前零時過ぎである。「もの好きもいいとこ!」と、流石にこちらはこの寒空に付き合えず寝床へ。

明けると、私は恒例の早朝ウオーキング、これだけは雨が降らない限り欠かさない。「寒いのに好きだなぁ、親父はー」とうちの若者は、寝床の中できっと言っているだろう。と歩きながら一人つぶやく。

漸くみんな揃ったところで、屠蘇(とそ)酒と雑煮で元旦を祝う。日本酒に屠蘇を入れると悪酔いしない、と昔からバアチャンだったか親父だったかに、よく聞かされていた。だから毎年、妻も屠蘇散は忘れずに買って来てくれる。これで結構楽しんでいる。

殿様気分になり、塗り物の酒器で朝から堂々と酒が飲めるのは正月くらいだ。戴きものの新潟産の銘酒もすぐなくなってしまった。まあ四人で飲めばなくなるのも、当たり前。一日置いて三日はみんなで温泉へ。

我が家から一山越えれば佐賀県で、ここは山が多く温泉があちこちで湧いている。馴染みの古湯温泉へ一泊予定で出発した。此処の温泉は、二十度くらいの(ぬる)()であるが、文字通り古くから温泉地としてあり、いまも結構親しまれている。

余談になるが、私は最近、公共の宿を探すのが楽しみで、今回もある企業の元保養所に(つて)を求めて予約したもの。いま問題になっているかんぽの宿ではないが、最近年金基金の解散などで、公共宿泊施設が結構安価に利用出来る、と言うより当方が着目し出した、と言った方が正しいかも知れない。

そんな感じの、妻の骨休めも兼ねた温泉行きである。夕食後のひと時を卓球室に行く。「お父さんて結構打ち方うまいじゃん」とかなんとか(おだ)てられ、何十年ぶりかで、下手なピンポンをさせられた。「あとで又温泉に入って汗をながせばいいか!」と自分を慰めながら。

昨年はネズミ年であった。振り込め詐欺や老舗料亭の食べものの使いまわし、とか、チョコマカとした事で振り回され、ごまかされ、世間が騒がせられた。今年はどんな年になるか、些細な事に動じる事なく、牛歩の如くしっかりと、大地を踏みしめて行ける良い年にしたい。

「給付金を早く出してくれれば良いのに、もう使う計画はちゃんとたてているんですよ!」「一家で少し贅沢な食事をしに行くんです」先日乗ったタクシーの運転手が言っていた。そうだ、こちらも又安い温泉を探していこう。これも景気対策のためだ!

※本記事は、2021年3月刊行の書籍『孫の足音』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。