その2 鰻ハーフ&ハーフ

「まあまあ、お二人ともお掛けになってくださいよ。生ビールでいいですよね。美紀ちゃん。お二人に生ね」

「は~い。すぐに」

美紀がなみなみと泡立つビールを注いてカウンターに置いてくれた。

「はい。どうぞ」

今日も暑かった。疲れた。いろいろ考えなくちゃいけない。でもこの瞬間だけは俺を裏切らない。キンキンに冷えたグラスに黄金に輝く命の水。

さあ、飲むぞ!

一気にグラスの半分ほど飲んだ。あ~なんて美味いんだ。俺の大好きな夕陽ビール。最高の喉ごし。生き返るよ、全く。

「あ~美味しいわ~」

横で月子さんが男らしく喉を鳴らして飲んでニヤリ。

「元気になるっていうか、心がほどけるのよね。ここのビールは」

本当にそうなのだ。それまで誰にも話したくなかったことをいつの間にかぽつりぽつりと打ち明けてしまった。ここ最近の売り上げのこと、夏場の花屋事情、そして悪代官みたいに見えた今日の銀行員。俺サイテーの経営者。

「なるほどね~。じゃあ、結局は売り上げが上がれば融資してもらえるんでしょ」

いとも簡単そうに月子さんが言った。

「いいな、いいな。うちなんて銀行さんから門前払いされてそんなことも言ってもらえないよ」

「いや、でも、夏は売れないんですよ。花を買って家に着くまでに枯れちゃうってこの暑さなら思うでしょ。まあ、うちはそうならないようにちゃんと工夫していますけどね」

ああ、このままじゃせっかくのビールがやけ酒みたいになっちゃうよ。

「俊平さん。今日は何にします?」

気分を変えるように大将が聞いた。

「う~ん、何か元気になるもの」

そんなものあるわけないよな。わかっていながら、ぶっきらぼうに言ってしまった。