第Ⅱ部 人間と社会における技術の役割

Ⅱ- 1 社会における技術の役割

2. 人間能力の拡大

人間の見る・聞く・話す機能を拡大したのが、郵便や電話、スマートフォンなどの通信技術でしょう。見る機能の拡大としては、顕微鏡を用いて肉眼では見えない小さなものを見ることや、望遠鏡で遠くのものを見ることができるようになったこともあります。

人間同士のコミュニケーションを、直接会ったり手紙でやりとりしたりしなくても、電話やメールによってできるようになったことは、コミュニケーションの速度を飛躍的に向上させました。海外の人との情報交換は、インターネットが普及するまではとても時間がかかりましたが、現在では瞬間的にメールで伝達することができます。衛星通信のおかげで、海外で行われているスポーツ競技もリアルタイムで見ることができるようになりました。

計算や情報処理は、コンピュータが得意とするところです。電卓はすぐに計算をしてくれますし、コンピュータを用いて複雑な計算をすることもできます。いろいろなデータを整理したり、統計処理したりすることもコンピュータにさせることができます。

これらは人間の計算能力、データ処理能力を拡大したものと見ることができます。近年進歩が著しいAI(人工知能)も、人間の情報処理(画像判断、経験的判断)能力を拡大したものと見ることができます。

人間が働くことへのサポートが生産技術であると見ることができます。手作業では時間のかかる作業を自動機械が高速で作業します。性能のよい機械を用いてプログラム動作をさせることで、精度の高い部品を加工することができます。

自動機械は24時間、夜中でも作動します。これらは人間が物を作る仕事を、技術が拡大していると見ることができます。

そして、人間がより長生きすることを技術が助けています。まずは、薬や手術などの医療技術の進歩で病気を予防したり、病気にかかっても治療したりすることができ、長生きすることができるようになりました。

また、健康に関わる知識が向上して、健康を考慮した生活を心がけるようになりました。結果として、病気になりにくい、あるいはなったとしても適切な治療ができる環境が整ったわけです。

このように、人間能力の拡大という視点で見ても、技術が大きな役割を果たしていることに気がつきます。
 

※本記事は、2019年4月刊行の書籍『人と技術の社会責任』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。