「そうや、悪い頭で悪かったなあ! 悪い頭やけど、いろいろ真剣に考えてみたんやで。明確な答えを出すんは到底無理やったけどな」と苦笑しながら応じた。

「結局のところ、この世で生を受けたものには、いつかは必ず、全く平等に死が訪れるという厳然たる事実の中で、どう生きていくかということが問題だと思う。不幸・不運に嘆き苦しむのか、幸福・幸運の甘い香りに酔いしれるのか、しかし、その不幸・不運も幸福・幸運も、永遠に続くわけではないはずだと思うんだ。

だから、そんなことよりも、今というこの時を生きていること自体に喜びを感じ、感謝すべきなのかもしれない。悲しい時、苦しい時、あるいは不運な時に、簡単なことじゃあないとは思うがね。どうせ死ぬんだからといって、自暴自棄にというか、やけっぱちに なってはいけないと思うんだよ。口で言うのは簡単だけどさ」と茂津は、いつもと違って真顔で語った 。

※本記事は、2021年3月刊行の書籍『海が見える』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。