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二月二十一日(月)

義母が退院してきて、半月ほどが経った。今回は、だいぶ容態が落ち着いている。この日は久しぶりに青空が広がり、義母の部屋をのぞいてみると眠っていたので、私は二階の寝室に上がって掃除をすることにした。夫が読み置いた新聞の山を片付けようと、間に挟まっている広告を抜き取っていた時だった。一枚の白い便箋を発見した。

♥たー君へ♥
仕事に行ってきます。パンツとくつ下、良かったら使ってね。早く帰ってこれるといいなぁー。ゆっくり休んでいてね。三日分寝ちゃったから元気かナ。今日もたー君と一緒にいられるんだね♥ それだけを楽しみに今日も頑張ってきます。
晴香

最寄り駅の近くにあるビジネスホテルのレターヘッドに書かれていた。

(「たー君」って……)

咄嗟に目の前の現実を、どう消化すればいいのかわからなかったが、胸の鼓動が収まるにつれて思い出したのが、あの夜のことだった。義母のお見舞いから戻り、電車がない時間に最寄り駅まで送ったこと……。そういえば、この年末年始は、徹夜で朝方に帰ってくることや、忘年会や新年会で遅くなる日が、いつもの年よりも多かったかもしれない……病院と家を行き来する
のに忙しくて、うっかりしていたけれど……。

夫に問い質すべきか、何もなかったかのように過ごすべきか悩んだあげく、私の出した答えは、義母に相談することだった。

「あの……ちょっと見てほしいものがあるんやけど……」と、義母に例の手紙を静かに渡す。「……そうか、本人に言わなあかんわ。ちゃんと話しい」

その夜、義母に言われたまま、孝雄に話を切り出してみるも、急に不機嫌になり、「仕事は辞める。ずーっと家にいる」と駄々っ子のように膨くれただけで、何ら釈明をしようとはしなかった。

二月二十四日(木)

何の話し合いもできないまま、今日も帰りが遅くなると孝雄からメールがきたので返信する。