ファーストコンタクト

転機は9月、M&Aマッチングサイト登録して約3カ月が過ぎた時でした。実際にこのようなメールが届きました。

2018年9月

【TRANBI】案件通知

[業種]教育・教室・ノウハウ

[地域]中国

[売上高]0円~500万円

[営業利益]損益なし

[売却希望価格]250万以下

[交渉対象]個人、法人

売り上げは500万円以下でかつ損益なし(赤字の可能性がある)ということですが、売却希望価格は250万円以下でした。内容を開き、詳細を確認すると英会話教室でした。私は英会話教室には通ったことがないため、全くイメージが湧きませんでした。そもそも私自身、「国語・数学・英語・理科・社会」の5教科の中で最も苦手なのが英語でした。

そこで私は考えました。英語が得意な人が英会話教室の経営に携わることはあっても、英語が苦手な私のような人が携わることは、なかなかないのではないだろうか。私には英語が苦手な人の気持ちや、英語が話せるようになりたい人の気持ちが分かる。そうやってお客様目線に立って見ることができるのは、逆に強みなのではないだろうか……と、妙に前向きな気持ちになっていました。

また、私が英語を話せない、進んで勉強ができなかった理由は、英語そのものが苦手というより、英語を喋る時に「恥ずかしい」と感じていたことが根本にあったと思います。それならば、「間違いを恐れずたくさん失敗してもいい」「恥ずかしくないし楽しい」と思えるような環境を創出することで、昔の私のように恥ずかしさから英語に苦手意識のある人が、気軽に学べる英会話教室を作れるのではないかと考えました。

さらに気になる項目がありました。会社の場所です。メールに記載されていた地域は中国地方でした。当時、私は静岡県に住んでいましたので、中国地方の中で一番近い岡山県だったとしても新幹線を使って2時間半かかります。遠隔での運営が可能かどうかを考えた時、現職で培った飲食店の複数店舗管理の感覚からは、おそらく可能だろうと感じました。

当時は50近い店舗の管理を担当していました。当然ながら毎日お店に行けるわけではないので、店長やエリアマネージャーと店舗を運営していくことになります。日々のコミュニケーションの取り方や遠隔地での運営のノウハウは得ていたものがあったので、私の中では中国地方でも会社の運営は可能だと考えていました。

私の出身が島根県ですので中国地方の活性化にも役立てたらという気持ちもあり、この案件とコンタクトを取りたいという気持ちはさらに高まりました。

私はすぐにメッセージを送りました。

「はじめまして。英会話教室に興味を持っておりメッセージを送らせていただきました。個人での契約希望です。個人でもよろしければ交渉よろしくお願いいたします」

すると、1時間後に返事がきました。

「はじめまして。ご連絡いただき誠にありがとうございます。私、代表のSと申します。個人の方でも英会話教室に興味がある方は嬉しく思います。現在もしくは過去に英会話教室などのご経験はありますでしょうか? どうぞよろしくお願い致します」

もちろん私には英会話教室の経営に携わった経験はありませんし、ましてや英語は全く喋れません。似たような塾などもやっていた経験はなく、教育の経験としてあるのは8年前に行った高校の理科の教育実習1週間のみです。ここで経歴を盛っても仕方がないので、そのまま正直にやりとりを続けます。