バランスのいい食生活を送るための魔法の言葉「まごわやさしい」 

米を主食にして、野菜・芋類・魚介・豆類・海草類などを副食とした、日本人の伝統的な食生活は、体に必要な栄養素をたっぷりと含んだ理想的な食事といえます。一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスといわれています。

栄養バランスのよい食事をするための“魔法の言葉”として、私は講演会などで「ま・ご・わ・や・さ・し・い」という言葉を紹介しています。

これは、健康に役立つ和の食材をバランスよくとるために、食材の最初の文字を取って、覚えやすくいい表したもので、食品研究家で医学博士の吉村裕之先生がおっしゃっている言葉です。語呂合わせが良くて、覚えやすいですね。では順に見ていきましょう。

「ま」は、大豆をはじめとする豆類のことです。 

味噌、豆腐、豆乳などの豆製品も含まれます。特に大豆は、皆さんご存知の大豆イソフラボンをはじめ、良質のタンパク質の宝庫です。 

大豆イソフラボンは、がんの成長を促進すると考えられている酵素の活動を抑制し、がんの危険性を低下させる効果があることや、麹菌で発酵した大豆イソフラボンは、不妊症の治療に有用であることを示唆する論文が発表されるなど、健康に対してさまざまな有用作用が期待できます。

「ご」は、ごま、ナッツなどのナッツ類です。

ごまは昔から栄養豊富な食品であることで知られています。ごまにはマグネシウム、マンガン、カルシウムなどのミネラルや、ビタミン、脂質、タンパク質など、さまざまな栄養成分が豊富に含まれていて、抗酸化作用をはじめ、コレステロール低下作用、抗高血圧作用、疲労回復などに効果があるといわれています。

「わ」は、わかめをはじめとする海藻類です。

海藻は海中の栄養素が溶け込んだ海で育つため、ヨウ素をはじめ、カルシウム・カリウムといったミネラル成分、および食物繊維を豊富に含んでいます。また、免疫力を高める成分(フコイダン)も含まれています。

「や」は、野菜類です。

緑黄色野菜は抗酸化作用にすぐれ、健康に良いことは広く知られていますが、じつは、キャベツや玉ねぎといった淡色野菜にも免疫力を高めたり、高血圧を緩和したりする作用があります。 

健康に良い野菜といえば、緑黄色野菜を思い浮かべる方も多いと思いますが、緑黄色野菜だけではなく淡色野菜や根菜など野菜全般に健康に良い作用がありますので、バランスよくとることが大切です。

「さ」は、魚類です。 

魚に含まれるDHAやEPAは「健康に良い成分」としてよく知られています。脂質異常症改善の医薬品にもなっている成分で、最近では認知症に対しても良い作用があることが複数報告されています。 

少し意外と思われる作用として、体内でDHAから作られる代謝物質がインフルエンザウィルスの増殖を抑え、インフルエンザの予防や症状悪化を防ぐはたらきが期待できるということを秋田大学や大阪大学の研究グループが発表しています。

「し」は、しいたけなどのキノコ類。

キノコ類は低カロリーでビタミン類、食物繊維、ミネラルなどの栄養素が豊富に含まれています。また、免疫力を高める作用などが期待できる食材です。

「い」は、いも類。 

いも類は食物繊維を豊富に含んでいるので、血糖値を急激に上げすぎることなく、脳や体のエネルギー源になります。また、便秘解消効果もあります。ビタミンやミネラル、カリウム、抗酸化作用のあるポリフェノールなども豊富で、栄養的に優れた食品です。

  • その他(お茶、味噌や漬け物などの発酵食品)

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  • そのほか、大事な日本食であるにもかかわらず、忘れられがちなのが「緑茶」、いわゆる日本茶です。
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  • 昔から飲み継がれてきた緑茶には、健康に良い作用が期待できる苦味成分のカテキンと、うまみ成分のテアニンなどが含まれています。静岡県のホームページには、緑茶のがん抑制効果、メタボ予防効果、腸内細菌叢調整効果などの他、多くの健康効果について紹介されています。
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  • 今は日本茶以外に、ウーロン茶、プーアル茶、ジャスミン茶、紅茶などさまざまなお茶が販売されており、日本茶離れが著しいといわれていますが、最近では、がん抑制効果をはじめ、生活習慣病や感染予防など幅広い効果があることが知られるようになり、緑茶は世界的に見直されてきています。
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  • さらに、味噌や漬け物(ぬか漬け)といった発酵食品も忘れてはならない和食文化です。京漬物の中から、植物性乳酸菌の「ラブレ菌」が京都パスツール研究所の岸田綱太郎博士によって発見され、体内でインターフェロンの産生能力を高めることが報告されています。
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  • こうしたものは、日本人が慣れ親しんできた「和食」の食材ばかりです。これらをバランスよくとれば、たくさんの栄養をまんべんなくとることができて、しかも生活習慣病予防に効果的です。
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  • ということは、もともと日本人が食していた和食が、健康長寿につながっていることは十分考えられます。日本人が世界的な長寿国となっている原因の一つは、このような食文化にあったのかもしれません。
※本記事は、2021年2月刊行の書籍『人生100年時代健康長寿の新習慣』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。