次女の結婚

まだ夏の暑さが多分に残っている九月の初め、渋谷のレストラン「マノワール・ディノ」の庭で、我が二番目の娘が結婚式を挙げた。

「シンプルな披露宴と式でなかなか良かったですよ」と、出席者に褒められた。

〈まあ、要するに簡単だったのだな……〉

と、此方は冷ややかに受け止めたが、それは兎も角として、

「どんな結婚式だったのですか」

と他の人に聞かれたり、随筆に書いて下さい、と、催促があったので、此処に記す事とした。

まず「自分達二人の手作りでやろう」と話し合ったらしい。

それはそれで大変結構な事である。

勿論、当日の案内状も、パソコンを叩き二人で作り、発送する事に始まる。

そして、次女雅恵が装うウエディングドレスは、流石に自分では出来そうもない、そこで母親(我が妻)に頼んで来た。

娘達の小さい頃から、洋服は殆ど妻の手作りで間に合わせてきたので、最後の結婚衣装も母の手になる物で式に臨みたかったのか、その深意は計り難いが。

娘の為にと張り切った妻は、夜なべをして作り上げた。それも奮闘数ヵ月、式の一週間前に漸く出来上がったのである。

二~三年前に結婚した長女も、やはり妻に披露宴のドレスを頼んで来たので、これを覚えていたらしい。

長女と違った所は、納得のいく生地を自分で探して、これで作ってと頼んできた事である。

ドレスだけでなく、靴、イヤリング、ブーケ等、身に着ける物は、学生時代からの友人達の、協力による手作りである。

靴とイヤリングは八木綾子ちゃん、ブーケは軽部朋子ちゃん、ウエルカムボードは倉持二郎君・えみちゃん夫婦と、全ての物が皆さん、心を込めて作って下さった作品である。

その友達も、今ではそれぞれのプロである事言うまでもない。

本当に恵まれていたもの。