1章 自然の営みと自然災害

人間は自然の営みとどう対峙してきたか?

人間は防災施設を造り自然をコントロールしてきた

地球上に住む全ての生物の中で、防災施設を自前で構えているのは人間だけである。なぜ人間だけが防災施設を設けるのか。それは人間がマイナス要素をプラスに変える知恵と能力を持っているからである。危険な場所でも防災施設を造ってその危険を払拭し、そこに文化を根付かせることができるからである。

他の動植物は自然界に逆らわず、自らの住める場所を見つけてそこを棲み処としている。また自然の地形や環境に自らを順応させて生存している。

一方、人間の自由度と自然界の営みは一致していない。利便性を優先して低地に住めば浸水し、安全性を重視して高地に住めば日常生活が不便になる。そこで人間は自然界の構造や営みに逆らって、地球の形状を変化させ、防災施設を造ることで自然をコントロールしてきたのである。

防災施設が自然活動に負けているという不甲斐ない事実

地球上に降る雨は、水の持つ性質によって高地から低地へと流れる。地形に倣って集合しながら増量し海に至る。全く自然の法則どおりの営みであって、そのメカニズムは誰の指図も受けない。自然界は果てしなく時間を掛けて山岳を穿(うが)ち、渓谷を創り、三角州の大平野を造りながら大海に注いでいる。地球誕生以来、自然界の営みが延々と時間をかけて自由に創り上げてきた地球の造形に人間がメスを入れ、原形の自然環境を壊して、人間主体の有益性に変えているのである。

地球には多くの生物が生息している。その昔は恐竜が支配していた時代もあるが、今はたまたま人間が地球上の覇者である。地球上の覇者である人間が、自分の有益性のために自然環境を壊し、人工的に河川を造り、ダムを造り、住宅地を造り、農地を造り、工場用地を造って人間主体の生活をしている。

こうして一方的に人間が生活の基盤を造り、自然を制御しようとしている中、地球の覇者であるはずの人間側が自然の起こすエネルギー、自然活動にいつも負けているとは全く不甲斐ない限りである。自然環境は短時間では変化せず、時間を掛けて同じ現象を繰り返している。それに対して人間は、自然の営みと比較すれば超短期間で人工的に施設を造っておいて、その施設がいとも簡単に自然活動に負け続けているとは全く無策であり知恵のないことを証明している。
 

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『国土崩壊 「土堤原則」の大罪』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。