なおこの施策はそこに住む人の危機を解決するだけではない。ここを遊水地化することで、例えば東京の浅草、上野、日本橋、日比谷などの低地部分の洪水被害の危険が遠のくし、荒川の少し上流埼玉県内の低地の中小河川の内水氾濫なども防げる可能性がある。

これは5区に住む人だけのためではなく、周辺の多くの人にも恩恵が及ぶのである。だから5区の人たちは、多くの人たちのための犠牲になって移住する、とも言える。

5区以外の周辺の人々にも、さらに広く国民全員がこのことをよく知ったうえでこのプロジェクトを評価してほしいのである。

それが正しいということ、それを早く行うべきであるということが世の中に周知されなければならない。そのために国民を説得することも国の仕事であるとともに、国民もそれを理解する努力を払わなければならない。

このほか、細部を詰めて行けば行くほど、移動が困難という施設などが出てくるだろう。そういうものを適切に残しながら、東京湿原を作るという最適解が見つけられると筆者は思うのである。

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『自然災害と大移住』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。