再会

一月も末となったある日の昼下がり、京の町は比叡山おろしの寒風が吹き荒れていた。

そんなある日、光秀が二条堀川沿いを歩いていると、室町通りの方からこちらに向かってくる二人の男がいた、まだ陽も高いというのに二人の足どりは千鳥足だった。二人は原田左内と荒法師覚栄だった。

「お久しぶりでございます」

光秀が声をかけると二人は怪訝(けげん)そうな顔で振り返り、光秀と気が付いた覚栄は、

「おお朴念仁(ぼくねんじん)か、京に舞い戻っておったのか、今まで何処をうろついておった」

「はい、堺から紀州を巡り、根来衆や雑賀衆に鉄砲の技術を学び、高野山や吉野山を巡り修行を積んでおりました」

「相変わらずまめに励んでおるのう。それで出世の糸口は見つかったのか」

「雪解けの頃より、越前、越後に向かい、この鉄砲の普及の宣伝を致しに参る所存です」光秀は布袋に入れて左手に携えていた雑賀孫一から貰った鉄砲を突き出した。

覚栄は一瞬怯んで

「それが鉄砲か、とんだ物騒なものが蔓延(はびこ)る世になったものよ、そんなものが蔓延(まんえん)しては、左内の剣術の技など何の役にもたたなくなる、ところで、いくらかあぶく銭はないか、こう寒くては酒代がかさんでかなわん」

光秀はいつぞやのお礼にと、孫一から貰った十枚の金貨の中から二枚を取り出し、一枚ずつ二人に渡した。