「哲学の復権」「経済の刷新」「芸術の革新」を通して、西欧文明の限界を突破する
西欧の“形式知”による文明は行き詰まり、“形式知”に基づく民主主義に対して“実践知” “暗黙知”のポピュリズムが台頭している。世界は分断の様相を呈しているのだ。
いまこそ、本来の日本文明である“実践知” “暗黙知”の文明の復権が求められている。
「日本文明試論」「続・日本文明試論」「深耕・日本文明試論」と3作にわたり絵画、建築、文学、経済と日本文明の基礎をなす各分野に切り込み、独自の視点と解釈で縦横無尽に論じてきた著者が、ついに第4弾を上梓。
日本の進むべき方向を示す画期的評論
本記事は、株式会社竹中工務店で設計部及び設計本部にて標準仕様、標準図等の作成や、技術・申請で現業支援業務に携わっていた大島雄太氏の著書『終結 日本文明試論 来るべき世界基準の地平を拓く思想』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。
“形式知”“実践知”“暗黙知”について
“形式知”とは数値や文字で表現できるのに対し、“実践知”や“暗黙知”とは人間が生きるための本能や経験の集積なのです。
それがどのようなものであったのかは、江戸時代の商人をみれば分かるのです。
寺子屋で読み・書き・算盤を習い、商家の丁稚になり、後は経験を積み一人前の商人になるのです。
江戸時代の米相場では世界で初めての先物市場を創り出すことが出来たし、また、近江商人の「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」の考え方は、現在注目されている公益資本主義の考え方を先取りしているのです。
建築では“実践知”“暗黙知”により、平安時代に免震構造、江戸時代には制振構造を生み出して地震に対処していたのです。そのことを(図2)により説明します。
昔の大工は免震構造、制振構造を考えたのではなく、健全なバランス感覚から来たものであり、動きを捉えるセンス、それをどう構造物に仕込むかは棟梁の“勘(暗黙知)”であったのです。
※本記事は、2021年3月刊行の書籍『終結 日本文明試論』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。