支度して出かけるからと病院から自宅に戻った。すぐに出かけると思いきや、なかなか出かけようとしない。夕食を済ませ、シャワーを浴びて……(まだ行かへんのかなぁ?)と思っていると、「時間がない、早く送って」と。

時計の針は、午前〇時十七分を指していた。

(こんな時間に? 電車なんて、もうないのに……)

しかし、下手なことを口にしてキレられても困るので、ここは、そのまま黙って夫を車で最寄り駅まで送った。

二〇一一年二月七日(月)

あれから義母は、十日間から二週間ほど入院しては家に戻ることを繰り返していた。明日また退院するというこの日、いつものように病院へ行くと、看護師長さんから、「退院にあたってお話があります」と声をかけられた。

いわく、「お義母様を施設に入所させるつもりはありますか」と。どうやら義母は看護師長さんに、退院後に入所できる施設はないかと相談していたようだった。私は「義母を施設に預けるつもりはありません」と伝えた。「それならよかった」と看護師長さんは続けた。

「あの方を施設に預けようと思ったら、入所するだけで月に三十万ほどかかるようなところでないと、体調管理ができないでしょう。医療費や食事代など、日常生活に必要な諸経費も別にかかってきますし……」

義母の貯えからして、支払えないわけではないとは思ったが、義母が我が家にいてくれることで、少なからず孝雄を抑制させていることもあり、この状態を保つためにも、施設に預けるという選択肢は私にはまったくなかった。

翌日、退院して家へ帰る車の中で、看護師長さんから施設の件で話があったと言うと、義母が遠慮がちにつぶやくように言った。

「いつも、ようしてくれるやろう。でもな、うちのせいで、えらい面倒かけてしもていて……。施設に入ったら景子ちゃん、好きにできると思ってなぁ」

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『夫 失格』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。