最初の60代に見える外国人を内偵すると、大型の船が行き交う河向こうの高層ビルが建ち並ぶエリアにある一角に事務所を構え、アメリカの有名な玩具会社と提携して商品開発と製造を請け負っているようだ。

ストレスとホームシック解消のために洋風のレストランに通いつめ、出された料理をカメラに収めて感想を加えてブログに掲載する。時には店員に質問をするので目立つらしい。

もう一方の三人組は60代の母とその娘、車椅子の老人であった。老人は足腰が不自由らしく、母娘は介護車から店内にと、かいがいしく世話をする。

見慣れた店員たちが助力するのに声をかけ、ついでに世間話もしている親しさだ。

パンダで有名な上海動物園に近い高級住宅街の広大な敷地をもつ洋風の家に住んでいる。

ヨンスとヘンリクが調査しても何も収穫はない。方針を変えなければならないのだろうか。

それでも、念のためにチップを渡して情報を得ていた店員に接触しようとすると、数日前から姿が見えないという。

不正を働いた店員同様に姿が見えないのは、何か訳ありである。監視を気づかれたのだろうか。何かの発覚を恐れているのに違いない。

一人で来る男の過去のブログをたどって見ても、ストレスを解消して食を楽しむ気持ち以外になく、本国当時の経歴もしっかりしていた。

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『細孔の先 ―文庫版―』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。