一方、雄大なスコットランド高地を描いたパノラマは、それ自体の出来は素晴らしいにしても、どうしても作り物感をぬぐえなかった。

だが最も問題なのは、全体のストーリー展開も含めたテンポの遅さ、つい口ずさみたくなる曲の不足、登場人物の魅力の乏しさにあった。

成功した過去の作品にあったスピード感、快活さや楽しさに欠け、スター自身の魅力も含めた登場人物の吸引力も足りなかった。

ヒースの丘でジーンとシャリースが踊るロマンティックなパ・ドゥ・ドゥ、村を脱出しようとする若者への緊迫感にあふれた追撃シーン、マンハッタンのバーでの喧噪など振付けや演出に見るべき部分もあったが、全体とすると「舞台作品の良くできた映画化」の域を出なかった。

一九五三年十二月から翌年の三月にかけて撮影された「ブリガドーン」はアメリカでは九月にシネマスコープとして公開された。

製作費二三五万ドルに対し興行収入三三八万五千ドルが公式な数字だが、エディ・マニックスが保持していた原簿によると、実際は一五五万五千ドルの赤字だったという。

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『踊る大ハリウッド』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。