全国大会が開かれた当日、三人の子供たちを連れて会場へ行った。

子供達の前で壇上に上がるのは気恥ずかしいことだったので、やめようかと思ったが、いい年をしても恥をさらけ出して、学んでいる自分の姿を見せるいい機会だと思って連れて行った。

会場に着いたら、『ホノルル市長杯争奪スピーチコンテスト』と大きく書かれた看板が出ていた。

一等賞品はハワイ旅行だった。子供達を席に座らせて、自分の順番を待った。

大阪地区代表と呼ばれて登壇したら、子供達のそれぞれ心配そうな、不安そうな六つの目が、こちらをじっと見上げていた。

子供のことが気にかかったお陰で、アガリもしないで、二分くらいのスピーチを終えたような気がする。

『国際人とはどんな人のことですか?』というのが共通テーマだったと記憶している。

間もなく、コンテストは終了し、結果発表があった。何の間違いかと思ったが、二位の入賞者として名前を呼ばれた。

壇上でトロフィーを受け取ったら、子供達が自分のことのように大喜びをしている様子が視野に入った。

子供達にとって、『努力は報いられる』という教訓になったらいいと思った。

二等の賞品はグアム旅行だった。英語の勉強を再開したおまけで、グアム旅行をした。

結局、約四年間その学校に通った。その後、現実に就職の必要に迫られて、入社試験を受けることになり、結果的に、四十代後半にフルタイムの仕事に就くことができたのだ。

中年で専門性の高い職業に就いたため、入社してからは大変だったが、とにかく自分の翼で飛び立てた歓びは例えようもなく大きかった。

あの時思い立って勉強を再開しておいてよかったとつくづく思ったものだ。

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『乙女椿の咲くころ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。