いきなり話が小さくなり恐縮だが、誰にでもできることとして、まずはいろいろなアイデアをノートに書き留めていくことを提案したい。

別に最初から壮大なテーマである必要はなく、まずはいま取り組んでいる仕事について「こうしたら、もっと良くなるはずだ。それには、これをこうすべきだ」といったことからでいいと考える。

何と幼稚なことを、と笑う方もいるかもしれないが、いまの日本に欠けていて停滞の原因となっているのは、こうした前向きに新しいことに取り組んでいこうとする精神だ。

たとえ小さな気づきであっても、新たな製品やサービスが生まれる可能性、より大きな視野で言えば気候変動への解決策などにもつながる可能性を秘めているのだから、こうしたノートへのアイデアの書き留めも立派な「ベンチャー精神」への第一歩である。

実はこうしたアイデアのノートへの書き留めは私自身がしていることだが、始めたきっかけは、中学生のとき、当時の中曽根康弘総理大臣(在任:昭和57年〈1982〉)〜同62年〈1987〉)がテレビでご自身の経験として紹介しているのを耳にしたことだった。

中曽根氏は、かつての国鉄を現在のJRに民営化(昭和62年〈1987〉)するなど歴史に残る業績をやり遂げた方だが、20代で国会議員になったときから、自分が総理大臣になったらこれをしたいというのをずっとノートに書き留めていて、三十数年後に夢がかなったとき、数十冊にもなっていたそのノートがすぐに仕事に取り組むもとになった、と現役当時にテレビでお話しされたのを記憶している。