とべたよ

王子様は今では、美しいハスの花が大好きでした。ですから、ためいきをつくなり、自分の中にこれまでだれにも話さずしまってあったことをハスの花だけには話しました。

「実は、ぼくはもう何年も前にまだ池でオタマジャクシでいたとき、ひどい話を聞いてしまったんだ。二羽のツグミがビワの実に舌鼓をうちながらこんな話をしていた。

『なんて、のんきなカエルの王様とお后様かしら。自分のこどもたちがどうなったのかまるで知らないのだから』

『長い間、大谷夫人の庭から一歩も出たことがないから、世の中がどうなっているかまるで知らないんだ』

『どこかで幸せにくらしていると、思い込んで疑いもしないんだものね』

ぼくはツグミたちに

『いったい、どういうことなの?』

と、きいてみた。ツグミたちが教えてくれたのは実におそろしい話だった。いまやぼくたちカエルの敵はヘビでもモグラでもないそうだ。

このところ世界はとってもかわってしまったらしい。だいいち、巣をつくったり、餌になったりする草や木をみつけるのも大変だと言っていた。

人間がどこもかしこもなにやら固いもので土を隠してしまったらしい。

その上を鳥がかなわない速さと力を持った車というものが我が物顔に走り回っているらしい。

知らないで大谷家を出た兄さんたちも姉さんたちもあっというまにそのえじきになってしまったと言った。

なんとか逃げ延びることができたカエルたちも逃げ込める草むらもないまま人間がペットとして飼っている犬や猫の餌食になるか人間の子どもたちにつかまるかして命を落とすことになったと言っていた。

本当に僅かなカエルだけが川べりまでたどり着き土手の草むらの中で細々と生きながらえているらしい」

王子様の目には大粒の涙が浮かびました。ハスの花はまゆをひそめて言いました。

「じゃあ、あなたはずっとここにいて。ここは安全よ」

しかし、カエルの王子様は涙を拭くときっぱりと言いました。

「いや。ぼくは必ず旅に出る。これまですべてのカエルがそうしてきたんだ。だからぼくもそうしたい。それがカエルの世界のおきてだからね。ぼくはそれに従うよ。しかしね