例えば「この検査により死亡する可能性が0.01%あります」というような文言が同意書に入っていることが多いです。このように、なぜ万が一のことにまで触れるかというと、一番は訴訟対策だと思います。

「この検査・治療によって、こんなことになるなんて聞いてなかった」「こんな合併症を起こす危険性があると知っていたら、こんな検査・治療は受けなかったのに」というような批評から医療訴訟に発展する可能性があるからです。

私たち医療者は自分の身を守るために、事細かく同意書に記載し、患者さんおよびそのご家族に署名をいただきます。しかし、万が一のリスクを恐れるがあまり十分な検査・治療ができず、医療が萎縮(いしゅく)し、患者さんが不利益を被(こうむ)ることも多々あります。

例えば、人間ドックの便潜血検査が陽性で大腸内視鏡検査を受けるよう通達が来たけれども、医師から大腸カメラの危険性の説明を受けた結果、その危険性を恐れ、検査を行わず、進行大腸がんになって死亡してしまったというようなケースです。

人の考え方は人それぞれであり、万が一でも危険なら受けないというのは自由だと思います。ただ、この世の中に「自動車事故で死ぬかもしれない」と思って車を運転しない人がどれだけいるでしょうか?

ちなみに、自動車事故で死亡する可能性は1万回の運転に1回、内視鏡事故で死亡する可能性は10万回に1回といわれています。いかがでしょうか。あまりにも少ないリスクを恐れるあまり、萎縮医療になってしまうのはもったいないと思います。

インフォームド・コンセントにより、萎縮医療になってしまい、本来なら助かるはずの命が救われないケースがあるのです。

やはりインフォームド・コンセントも重要ですが、その検査・治療を受けることのメリット・デメリットを考えた上で同意書にサインすべきだと思います。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『やぶ患者になるな!』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。