生命保険と四つ葉館

梅雨の土曜日、同居人3人は、リビングに集まって何やら話し込んでいた。

「四つ葉館は四つ葉館だろう、何故、変える必要が?」

「海堂さんはわかってないなぁ、レトロな雰囲気が流行ったのって一体何年前?」

「ジュンジュンは何か候補があったりするわけ?」

「うん、四つ葉を英訳したらどうなるか辞書で調べたら【A Four-Leaf Clover】っていうんだって。それぞれのイニシャルを取って【AFLC】アフリークっていうのはどうかな?」

四つのアルファベットが書かれた用紙を見つめる二人。どうやらしっくりきていない。

「発想は悪くないし、俺はアイデアがあるわけでもないし。でも、響きが生命保険っぽいんだよな」

「あ、あたしもそう思った。ジュンジュン、あんた、ぱくったんじゃなくって?」

「しっつれいしちゃうわ! 盗作だなんて! 心外よ! 心外!」

巡波を激怒させてしまう紅弥。話題を変えろ!

「そ、そうそう……、7月に入ったら新しい入居者が来るらしいわよ。男性ですって! イケメンですって! ジュンジュン、あたし本気でいくから」

「勝手にしなよ。あー冷たいシャワーでも浴びてこよ」

星巡波と輝く名前

その男……整髪料で固められた明るい茶髪、トップスはグレーのパーカーで、赤い紋章=エンブレムと筆記体の印字、綺麗目なインディゴブルーのボトムスに差し色の様な有名ブランドの赤いスニーカー……は控え目に、四つ葉館本館、紺碧の扉を開いたが、巡波の顔を見て、刹那に激しく動揺した。

「あ、ああああ、ああ。あ、あだちひかり?」

巡波本人より驚く海堂と紅弥。

「安達」

「輝って……」

「そう、わたしの本名よ」

生き別れた妹と再会したかのようなテンションの新しい入居者。

「すす、すごい。こんなこと、こんなこと……」

「ジュンジュンってエキストラにもなれない、なんちゃってタレントかと思っていたけど世間には知ってる人が居るのね」

「原田紀行くんだっけ? ようこそ! 四つ……」

「アフリークへ!」