CBOは、また、問題になりそうな高金利の可能性を無視している。22兆ドルの債務は大半が短期債務であり、もし2パーセントの金利上昇があれば、すぐさま年間4,400億ドルの利子費用の増加として今の予想支出に加算され、赤字の増加となる。

アメリカはオバマが2012年から2016年にかけて予算制定時に有利に利用した人口統計上の最適スポットを過ぎてしまった。今からベビーブーマー層の退職が始まり、社会保険、メディケア、メディケード、傷病保険、軍人恩給などその他の制度での要求が生じるため赤字は更に膨らむ。

最後に、ケネス・ロゴフとカーメン・ラインハートの、債務が経済成長に与える影響に関する革新的な研究をCBOが見落としていることを指摘したい。

経済学者は債務の対GDP比率60パーセントが危険ラインであり、このラインを超えると債務は維持できなくなると考える。ラインハート-ロゴフの研究によると、更に危機的限界の債務の対GDP比率が90パーセントで、ここに至ると債務自体が成長見通しについての自信を失わせるようになる。

それは増税あるいはインフレを恐れる気持ちから生じ、その結果長期トレンドに比較し、著しく低い成長をもたらす結果となるからだ。

アメリカは90パーセントを大きく超えており、死のスパイラルの引き金を引く水準に達していて、年々状況は悪化している。これらの逆風を考慮するとトランプの経済成長の見通しは非現実的なものと断言できる。

予想よりも大きな赤字と予想実質成長より低い成長では、トランプ政権が債務比率を信任の危機に見舞われる前の状況に引き下げるには1つしか方法はない。

それはインフレである。もし年4パーセントのインフレが生じ、連邦準備制度理事会が金融政策で金利を2.5パーセントに固定できれば、そして、景気後退が無ければ、5パーセントの赤字を伴うが、6パーセントの名目経済成長を辛うじて達成できるかもしれない。

債務比率をなんとか管理できる状態にし、若干低下できるかもしれない。しかし、このシナリオは実現しそうもない。連銀はこの7年間2パーセントのインフレを起こすことができなかった。

近い将来に4パーセントのインフレを起こせるか不明だ。5パーセントの赤字予想も、減税、没収財産の免除、学生ローンの不履行その他マイナス要素を考慮すると現実的でない。

アメリカの国家債務は今や死のスパイラルの淵にある。

※本記事は、2020年12月刊行の書籍『AFTERMATH』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。